デビュー当時から応援している超越的天才作家・紺野天龍氏の新作ミステリ「神薙虚無最後の事件」。まだ発売前ですが、出題編が小説現代4月号に先行掲載されているということなので読みました。
小説現代 2022年 04 月号 [雑誌] (amazonリンク)
紺野天龍氏の作品は無条件で「絶対おもしろい!」と信仰しているので、今まであらすじなどの情報は一切見ないまま単行本を買っていたのですが、先日出版された新作「幽世の薬剤師」の帯に「神薙虚無最後の事件」のあらすじが掲載されていたのでつい目に入ってしまい……
神薙虚無最後の事件(amazonリンク)
あー!!! これ絶対おもしろいやつだ!!!!!!
あらすじを読んだだけで心がワクワクしっぱなしですよ。楽しみなものがあると夜眠れなくなる体質なので非常に困る。帯の仕事は完璧ですね……。
発売日まで待てないほどワクワクしていたので「プルーフ読める人が羨ましい……ぐぬぬぬぬぬぬぬ……」と書店員に嫉妬しまくっていたのですが、出題編の存在を知った瞬間に光の速さで小説現代4月号を購入しました。出題編と言ってもプロローグ的な感じかと思ったら想像以上にボリュームが多くて嬉しい。出題編を名乗っているだけあって、推理に必要な情報がバンバン提示されています。というわけで解決編(単行本)が発売される前に出題編の情報だけでどれだけ推理できるかチャレンジしてみようと思いました。がんばるぞ!
閑話
せっかくなので紺野天龍氏のおすすめ作品を紹介しようと思います。
紺野天龍氏の本は全部面白いので全部読みましょうと言いたいところですが、ADVゲーム好きとして「シンデレラ城の殺人」をおすすめとして挙げたいと思います。
王子殺害事件の犯人として容疑をかけられたシンデレラが無罪を勝ち取るため裁判に挑むというストーリー。癖のある魅力的なキャラクターや息もつかせないほど二転三転する怒涛の展開が逆転裁判シリーズのそれで、読んでいると自然に逆転裁判風な演出が脳内で自動再生されるくらい逆転裁判味のある作品です。
紺野天龍氏の特徴である「長文でありながら読みやすく理解しやすいコミカルかつ論理的な文章
シンデレラ城の殺人(amazonリンク)
推理開始
※※言うまでもないですが出題編のネタバレ注意※※
※※出題編を読んでない人は見ないでください※※
※※まっさらな気持ちで解決編を読みたいという人も見ないでください※※
※※万が一推理が的中して解決編の致命的なネタバレになってしまったらすいません※※
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情報整理
神薙虚無最後の事件(作中作)
実在したという名探偵・神薙虚無と怪盗王・久遠寺写楽の戦いを描いた「神薙虚無シリーズ」の最終巻。著者は“観測者”の御剣大。最終巻だけ事件が未解決のまま終わりを迎えることで伝説となったが、後に「神薙虚無は実在しない」と週刊誌で暴露されたことで炎上し、捏造妄想小説として世間から叩かれた。
名探偵たち
20年前に高校生探偵だった神薙虚無・星河かぐや・水守綾湖・渡良瀬鈴子のこと。
観測者
“名探偵たち”と共に行動して事件を記録し、「神薙虚無シリーズ」として世に出している御剣大のこと。
あくまで観測者としての立場を遵守するスタンスであり、事態への介入は基本的に行わない。
使徒
怪盗王・久遠寺写楽の付き人である沖影綸理・十六夜紅海・空峰美満・月見里読子・秋山大地のこと。
使徒たちは「リバースクラウン」と呼ばれる徽章を身に着けているが、なぜか沖影綸理はそれを上下逆さまに着けている。
オルゴール館
久遠寺写楽の隠れ家で、神薙虚無最後の事件(作中作)の舞台。
最終的に焼失し、沖影定理の焼死体が発見される。
久遠寺オルゴール
特殊な手順を踏まない限り開けることができない寄木細工の秘密箱。
オルゴールにもなっていて、中にはある“言葉”が隠されているが詳細不明。
最終的に焼失したと思われたが現存するらしい。
「あのお嬢さんはきみが守ってやるんだぞ」
御剣大が最後に聞いた久遠寺写楽の一言。
エクセレント東雲Ⅱ
瀬々良木白兎と来栖志希が住んでいるボロアパート。余談だが別に『I』は存在しない。なぜ『Ⅱ』なのかは謎だ。
大半の人というか、ほぼ全ての人類にとって何を言ってるのか意味不明だろうけど、この“エクセレント東雲Ⅱ”といい、「幽世の薬剤師」の“御巫神社”といい、非常に限られた人間にしか通じないネタをぶち込んでいくスタイル嫌いじゃないよ(ぼくは理解るぞアピール)。
もし「エクセレント東雲Ⅱ!? エクセレント東雲Ⅱじゃないか!!!!!」と興奮した人が居たら固い握手を交わしたいですね。我々は同志です。
考察
神薙虚無の正体
神薙虚無に実体はない。これは本人もそのように証言している。
御剣大の主観ではあるが、「神薙の言葉を待つ」「神薙の決定は絶対」など、まるで神薙虚無の言葉が神託のように扱われている。また、名探偵たちも神薙虚無がまるで教祖様であるかのような扱いをしている。これは神薙虚無は常識の範疇から逸脱する神秘的な存在であることを仄めかしている。
しかし、「神薙虚無に実体はない」という穿った視点で「神薙虚無最後の事件」を読んでも、周囲の反応からして神薙虚無に実体がないようには到底思えない。登場人物が全員同じ幽霊のようなものが見えるというファンタジー設定でも導入しなければ「神薙虚無に実体はない」という仮説は成立し得ない。そこで「神薙虚無に実体はないが、神託者のような存在がいて神薙虚無の言葉を代弁している」という仮説を新たに提唱する。どういうことかというと、名探偵たちの中の誰かが一時的に神薙虚無なる超常的な存在に憑依されているか、神薙虚無という別人格を持っているのではないかということ。これも充分ファンタジーのように思えるが、全員同じ幽霊のようなものを見ていたよりかは説得力があるし、何より(憑依はともかく)“別人格”はそこまでファンタジーではない。
そして、そのように仮定して「神薙虚無最後の事件」を読むと、神託者の正体として最も怪しいと感じるのは星河かぐやであり、彼女の中に“神薙虚無”なる概念(別人格)が存在し、状況に合わせて神薙虚無に身体を貸しているのではないか。
つまり、神薙虚無とは概念上の存在であり、その正体は星河かぐやに憑依している高次元的存在(或いは別人格)と言えるものであり、客観的にみると神薙虚無と星河かぐやは同一人物である。
神薙虚無の発現には、星河かぐやから神薙虚無へ質問等を投げかけて言葉を引き出させるプロセスが必要となる(例外あり?)。そのため、星河かぐやが神薙虚無へ水を向ける描写が多い。また、神薙虚無の癖であると言われている「ネクタイ弄り」は、星河かぐやに憑依している神薙虚無の発現(或いは人格交換)が起きていることを客観的に示すサインでもある。
終盤の「神薙虚無は忽然と姿を消した」「沖影を捜している途中で気付いたらいなくなっていた」というのは、「その時から星河かぐやの中から神薙虚無が発現されなくなった(或いは人格交換ができなくなった)」という意味である。
神薙虚無に実体はないと言えるいくつかの根拠
- 水守綾湖が提案した「ツーマンセル」という表現は、名探偵たちは観測者を含めて実体的には4人しか存在しないことを仄めかしている。
- オルゴール館のエレベータの積載量は2人+40キロ(約3人)ほどだと言われているが、事件発生時に4人(十六夜紅海・御剣大・星河かぐや・神薙虚無)搭乗しており、これは神薙虚無には実体がないため事実上3人しか搭乗していなかったことを仄めかしている。
疑問点
神薙虚無には実体がなく星河かぐやと事実上同一人物であると仮定すると、オルゴール館に神薙虚無と星河かぐやの部屋がそれぞれ用意されているのが不可解。これを無理矢理解決させると、御剣大がこの部分だけ嘘を記述したか、久遠寺写楽が気を遣って部屋を余計に用意したのだろう。
オルゴール館・部屋の特徴まとめ
- 扉が開いていると、その部屋に設定されている音楽が室内に流れる
- 曲目は“部屋の主”に合わせて久遠寺写楽の部屋から自由に設定できる
- 防犯装置として、午前零時を過ぎてから部屋のドアを開けると、その部屋の曲が館全体に響き渡る
- 館全体に鳴り響いている音楽は、扉を閉めてからも3分間鳴り続ける
- 3分間館全体に流れる音楽は先行のものが絶対的に優先される
- そのため3分以内に2つ目の扉が開かれた場合、先行の音楽を遮って新たな音楽がなることはない
- また、ドアの開閉情報が蓄積されて連続的に対応した音楽が流れるということはない
- 防犯装置は扉の「開く」という動作に対応しているため、3分超えた時点でも扉が開いている部屋がある場合、その部屋の音楽が新たに館全体に鳴り響くことはないが、部屋は「開いている」という状態であるため一般ルールの「室内に音楽が流れる」は適用された状態となる
- 十六夜紅海曰く、エーデルワイスは“久遠寺写楽が主の部屋”以外では絶対に流れない
防犯装置の回避方法(推測)
防犯装置が午前零時以降に扉の「開く」という動作に対応するものなら、午前零時前から扉を開けっ放しにしておけばいい。もちろんその場合でも一般ルールは適用されて室内に音楽は流れると思われるが、扉は常に「開いている」状態となるため館全体に音楽が鳴り響くことはない。
防犯装置の謎
「3分以内に“同じ扉”をもう一度開けた場合」について作中では言及されていない。そのため推測にしかならないが、おそらくその場合は「2つ目の扉が開かれた場合」と同じように処理され、1回目のタイミングで鳴り響いた音楽を遮ってまた1から再生されることは(もしくは鳴り響く時間が+3分延長することは)ないのではないか。また、本当に「2つめの扉が開かれた場合」と同じ処理が行われるであれば一般ルールは適用されるはず。つまり、防犯装置が作動した部屋の扉を閉じた時点でその部屋は「扉が閉じている」という判定となり3分後に館全体の音楽が鳴りやむ手筈となるが、3分も経たないうちに再び扉をあけたら「“扉が開く”という状態を通過するが、先行処理によって現在館全体に鳴り響いている音楽を遮ってもう一度最初から鳴り響くことは(或いは演奏時間が+3分延長されることは)ない。しかし“扉は開いている”という状態になるので、3分後(館全体に鳴り響いている音楽の演奏終了後)に一般ルールが適用され室内に音楽が流れはじめる」ということになるのではないだろうか。
もちろん「提示されていないルールX」が存在して「音楽が館全体に鳴り響いている最中に同じ部屋の扉を再度開けた場合は、3分経過しても一般ルールが適用されない(=室内に音楽が流れない)」という可能性も考えられないこともないが、もしそうならフェアを謳っている以上、久遠寺写楽は事前にそのような説明をするべきである。
現場における一般ルールの謎
事件現場の久遠寺写楽の部屋では神薙虚無の指示によって扉が開けっ放しにされていた=開いているという状態になっているのにも関わらず、室内に音楽が流れている描写が一切ない。「開いている」状態であれば、一般ルールが適用され室内にエーデルワイスが流れるはずである。ここから「死体発見現場では一般ルールが適用されておらず、室内に音楽が流れていないのではないか?」という可能性を示すことができる。その原因についていくつか考えてみる。
- 本当は室内に音楽が流れていたが、観測者である御剣大の記述に不備があった
- 「提示されていないルールX」が存在し、館全体に音楽が鳴り響いている最中に同じ部屋のドアをもう一度開けた場合は3分経過しても一般ルールが適用されなくなる
- 実は一般ルールが適用されており室内に音楽が流れるはずだったが、なんらかの理由によって音楽が流れなかった
観測者の記述不備及び「ルールX」が存在すると考えると推理が詰んでしまうため、ここでは“なんらかの理由によって本来流れるはずだった音楽が流れなかった”という説を前提にして考えていこうと思う。
ちなみに、「先ほどエーデルワイスが鳴り響いた瞬間~」「再び開ける際にまた館中にエーデルワイスが~」という記述からして、現場の室内にいたときに館中に響き渡っていたほうのエーデルワイスが未だに流れていたということは考えにくい。そのため「エーデルワイスがまだ館全体に鳴り響いていたので室内の一般ルールは適用されなかった」という可能性は棄却される。
なぜ現場の室内では音楽が鳴らなかったのか?
「曲目は“部屋の主”に合わせて久遠寺写楽の部屋から自由に設定できる(“部屋に合わせて”ではない)」ことから、「死体の発見現場となった“3階の部屋の主”は久遠寺写楽ではなかったため、室内にエーデルワイスが流れなかった」と考えることができるのではないだろうか。しかし、その部屋の主である老人(沖影定理)は十六夜紅海や御剣大に“本物の久遠寺写楽”として認識されている。この認識を尊重すると“部屋の主は久遠寺写楽ではなかった”という仮説に矛盾してしまうのだが、そもそも怪盗王“久遠寺写楽”とは偽名かつ概念的な存在であり、「今まで私が“久遠寺写楽”を名乗ってたけど、今日から君が“久遠寺写楽”となれ」という感じで条件が整えば他者でも名乗れるような曖昧な存在である。つまり何が言いたいかと言うと、現場が発見された時点で沖影定理は怪盗王を引退して久遠寺写楽と名乗るのを止めた(もしくはやっぱり本物の久遠寺写楽ではなかった)ため、その部屋はエーデルワイスが流れる必須条件である“久遠寺写楽が主”の部屋ではなく、“沖影定理が主”の部屋として設定されており、曲目は沖影定理に宛がわれた音楽に再設定されていたのではないか。しかし、作中において“沖影定理に宛がわれた曲目”は一切示されていない。故に彼の曲目は“虚無”であるため、室内に音楽は流れなかったのである。
そして、この説を採用すると「館全体にエーデルワイスが鳴り響いたことから、ドアが開閉された部屋は3階の部屋である」という前提に綻びが産まれる。もし「午前二時頃にエーデルワイスが鳴り響いていたとき、“3階の部屋以外”が“久遠寺写楽が主の部屋”として設定されていた」とすると、2階にいた誰かが(沖影定理から引き継いで新たに怪盗王を名乗るようになったのか、元々本物の怪盗王だったのかはさておき)怪盗王・久遠寺写楽だったという可能性が浮上する。そして館全体にエーデルワイスが鳴り響いた原因は、その者が自分の部屋(=主が久遠寺写楽として再設定された部屋)の扉を開閉したからであろう。しかし、エーデルワイスが館全体に鳴り響いた瞬間において3階の部屋が普通に“久遠寺写楽が主の部屋”として設定されていた場合、扉を閉じてから再度扉が開かれる3分の間になんらかの理由によってその部屋が“沖影定理が主の部屋”に変移したと考えれば、やはり午前二時頃に開閉されたのは3階の部屋ということになるため特に問題にならなくなるのだが、そうだとすると推理が詰んでしまうためその可能性は忘れることにする。
“久遠寺写楽が主の部屋”が“沖影定理が主の部屋”となったタイミングは?
すくなくとも、御剣大と久遠寺写楽が対面していたとき(=お茶会)、あの部屋は確かにエーデルワイスが流れていたことから“久遠寺写楽が主の部屋”だったと言える。よって、かの部屋が“沖影定理が主の部屋”と変移したのはお茶会後である。そのタイミングが午前零時以降だった場合は考える余地がなくなってしまうが、もし作中の描写内でそれが発生したとすると、お茶会終了後に御剣大が部屋から退出した直後の“沖影綸理と久遠寺写楽が約10秒間部屋の中で2人きりになった”タイミングが怪しい。また、もし犯人が沖影綸理だったとしたら、このタイミングで犯行に及んだということもあり得るかもしれない。
新たな久遠寺写楽は誰か?
ここまでの推測によって導き出された“新・久遠寺写楽”という存在について考えなければならない。
怪しそうなのはやはり例の10秒間に沖影定理と密会していた沖影綸理。身内ということもあり、彼女が久遠寺写楽の名を引き継いだかもしれない。また、彼女のリバースクラウンが上下逆さまになっているのが判明したのは10秒密会の直後であり、これは彼女が新たに冠を被る怪盗王となったことを示したものなのだろう(名推理)。
お茶会から事件発生までの流れまとめ
- 御剣大と久遠寺写楽がお茶会を始める。
- お茶会終了。使徒たちが入室(十六夜、空峰、沖影)。
- 十六夜と空峰、部屋から退出。
- 御剣大、部屋から退出。
- 沖影綸理と久遠寺写楽、約10秒間密室で2人きりになる。
- 沖影綸理、部屋から退出。御剣大と共に1階へ移動。
- 十六夜と空峰が食堂にいるのを観測。
- 御剣大と沖影綸理、2階へ到着して別れる。
- 水守、渡良瀬、月見里、秋山が2階の遊戯室で撤収の準備をしているのを観測。
- 星河かぐやが自室を退出し、御剣大と会話。
- 御剣大、すぐに自室へ戻る。時間は午前零時1分前(23:59)。
- 午前二時ごろ、エーデルワイスが館に響き渡る。
午前零時以降に自室から離れて活動していた人間はいるのか?
午前零時前に自室に戻らないと防犯装置が作動してしまうため、もし午前零時前に自室へ戻ることができなかった人間がいたらとても怪しい(何かしらの方法で防犯装置を回避していれば話は別だが)。
1階にいた十六夜、空峰は食器の片付けをしていただけなので、素早く作業をすれば午前零時前に自室へ戻れそうである。
遊戯室にいた4人は既に撤収の準備をしていたので午前零時前に自室へ戻れそうである。
気になるのは星河かぐやの行動で、午前零時になりそうな時間なのになぜか自室を離れている。
本人曰く「皆の様子を伺おうと思った」とのことだが、防犯装置が作動する1分前に近い時間からそれをするのは些か不自然である気もする。彼女は名探偵たちの中で誰よりも久遠寺写楽を警戒していたこともあり、もしかしたら「皆の様子を伺おうと思った」というのは夜中に警備みたいな真似をするつもりで言ったのではないか。言い掛かりかつ屁理屈のような主張なのは重々承知しているが、星河かぐやは午前零時以降なにかしらの活動を行っていた可能性がありそう。
なぜ2階に使徒が全員いたのか?
事件発生時、2階に名探偵たちと使徒が全員集まっていたが、よく考えるとこれはおかしい。なぜなら久遠寺写楽は「警護として使徒を必ず1人私の側に付けておく」と発言しているため、使徒が全員2階にいるとこの発言に矛盾してしまう。また、御剣大と久遠寺写楽のお茶会後も使徒は全員1~2階にいるため、このタイミングでも久遠寺写楽は無防備となっている。
この矛盾を強引に解決すると、使徒が側にいるべき対象は“久遠寺写楽”であって“沖影定理”ではない。もし今までの仮説通り、お茶会後に沖影定理が“久遠寺写楽”と名乗るのを止めて引退したとしたら、彼の周囲に使徒がいなくても“私(=久遠寺写楽)の側に使徒を付けて置く”という発言に矛盾しない。なぜならその時点で彼はもう“久遠寺写楽”ではないから。
犯人仮説
前提条件1:被害者の身元は絶対的に沖影定理であり、影武者などの可能性は無視する
前提条件2:被害者は死に至るまで多少の猶予があった可能性がある
前提条件3:凶器は鋭利なナイフ類だと思われる
犯人候補1:第零使徒・沖影綸理
御剣大と久遠寺写楽(沖影定理)のお茶会の直後、沖影定理と沖影綸理が約10秒間2人きりで密室にいた時間が発生しており、そのときに沖影定理を殺害した可能性がある。そして何事もなかったかのように部屋から出て、被害者が死に際に扉を施錠したと考えれば密室は完成する。また、彼女は超音波振動小刀という凶器になりそうな武器を所持している。
犯人候補2:欠陥探偵・神薙虚無
現場発見時、すやすや寝ている沖影定理に駆け寄って検死をするふりをして殺害した。
→後ろに十六夜紅海と御剣大がいる状況で殺害を実行するのはさすがに無理があるやろ。
犯人候補3:探偵姫・星河かぐや
誰よりも久遠寺写楽を警戒しており、午前零時以降に警備等の理由で活動していた可能性があるため怪しい。
犯人候補4:沖影定理
自殺と結論付けてしまえば物理的不可能性は解消するが、心理的不可解性が残る。
犯人候補5:謎の第三者
ミステリ的に微妙。しかし、もし死体が本物の久遠寺写楽であり「警護として使徒を必ず1人私の側に付けておく」という発言が嘘でなかったとしたら、沖影定理が一人になったタイミング(使徒が全員沖影定理の元を離れているタイミング)で“実はずっと姿を現してないもう一人の使徒が3階で警護をしていた”という可能性も考えられる。
真相仮説
注意・ここから先は言い掛かりと暴論と屁理屈を駆使して無理矢理捻りだした名推理である(今までもそうだったわ)。
犯人
星河かぐや
動機
結論から言うと、星河かぐやが犯行を行ったのは久遠寺オルゴールの“言葉”が原因である。
神薙虚無は久遠寺オルゴールを解いて例の“言葉”を把握したと自己申告しているが、神薙虚無と事実上同一人物である星河かぐやも、その“言葉”を把握できた可能性がある。
そして、例の“言葉”は神薙虚無にとっては意味不明だったが、星河かぐやにとっては犯行を誘発するものであった(根拠はない)。
例の“言葉”が具体的にどのようなものかは詳細不明だが、とにかくその“言葉”によって動機が表在化したのである(やけくそ)。
お茶会から火災発生までの流れ(妄想)
御剣大と久遠寺写楽(=沖影定理)がお茶会をする。
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お茶会終了。例の約10秒間で沖影定理が怪盗王を引退し、沖影綸理が新しい怪盗王・久遠寺写楽となる。それに伴い、以下の部屋の音楽が変更される。
- 沖影綸理(=新・久遠寺写楽)の部屋→エーデルワイス
- 沖影定理(=旧・久遠寺写楽)の部屋→虚無(音楽なし)
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沖影定理は怪盗王ではなくなったため、彼の側に使徒を付ける必要がなくなる。よって沖影定理を1人きりにさせても問題ないため沖影綸理(新・久遠寺写楽)は御剣大と一緒に2階の自室へ戻る。
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一方そのころ、自室で神薙虚無が久遠寺オルゴールを解放して隠された“言葉”を把握する。事実上同一人物である星河かぐやもその“言葉”を知る。
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星河かぐやが“言葉”を把握したことで彼女の中に動機が表在化し、犯行のために自室を離れる。ばったり御剣大と出くわすがすぐに別れる。
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防犯装置適用時間である午前零時前に、星河かぐやと3階にいる沖影定理以外の全員が2階の自室に籠る。
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午前零時過ぎ、星河かぐやが3階へ移動して“沖影定理の部屋”で犯行に及ぶ。この時点で沖影定理の部屋の曲目は“虚無”だったため、部屋の扉が開閉しても音楽は鳴り響かない。そして星河かぐやが部屋から退出した後、被害者の沖影定理は死に際に自分で部屋の扉を施錠する。
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星河かぐやが2階へ戻る(正確に言うと3階からエレベータで1階へ移動したのち階段で2階に上がる)。自室に入るために扉を解放すると防犯装置が作動してしまうため廊下で待機する(もしくは防犯装置対策のために事前に扉を開けっ放しにしており、そのまま自室に入る)。
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午前二時過ぎ、新・久遠寺写楽である沖影綸理が自室の扉を開閉。エーデルワイスが鳴り響く。
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2階に全員が集まる。
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十六夜紅海、御剣大、星河かぐやが1階のエレベータで3階へ移動。途中で星河かぐやが神薙虚無にチェンジする。
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沖影定理の部屋に到着。この時点でもエーデルワイスが鳴り響いている。
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沖影定理の部屋を解放。扉を開けっ放しにする。
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沖影定理の死体発見。
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いつの間にか館全体に鳴っていたエーデルワイスが鳴りやむ(演奏時間を過ぎたため。ただし具体的なタイミングは不明)。
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一般ルールが適用され室内にエーデルワイスが流れるはずだが、沖影定理の部屋の曲目は前述の通り“虚無”なので音楽は流れない。御剣大はこの矛盾に気づかなかったので「室内に流れるはずの音楽」についての言及をしなかった。
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神薙虚無が十六夜紅海に遺体が本当に久遠寺写楽であるかを確認する。十六夜紅海は沖影定理が久遠寺写楽を引退したのを知らなかったので頷く。
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十六夜紅海が「エーデルワイスは久遠寺写楽の部屋でしか流れない」と証言する。しかし一般ルールによるエーデルワイスがこの室内に流れていないため矛盾している。
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捜査終了。神薙虚無が星河かぐやにチェンジ。そのまま十六夜紅海と御剣大とともに1階へ戻る。
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全員1階に集まって推理大会。途中で星河かぐやが神薙虚無にチェンジ。
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御剣大がお茶会のことを話す。「あのお嬢さんはきみが守ってやるんだぞ」という言葉を聞いて神薙虚無が真相に到達。
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謎の出火により全員避難。
補足
- 凶器は食堂からナイフでも拝借したのであろう。
- 被害者である沖影定理は、自分が殺されることを前提にしてこの計画を実行した。
- 午前二時過ぎに沖影綸理(=新・久遠寺写楽)が部屋の扉を開閉したのは生前の沖影定理にそういう指示をされたから。
- 被害者が現場を密室にしたのは、もしなんらかの理由によって扉が開けっ放しになってしまったらと室内に音楽が流れないことがすぐバレてしまうから。
- お茶会の目的は観測者である御剣大に「老人は本物の久遠寺写楽である」と認識させ、怪盗王から引退した後で事件が発生しても「遺体は本物の久遠寺写楽である」「故にこの部屋の曲目は絶対的にエーデルワイスである」と誤認させることと、御剣大を通して神薙虚無に「あのお嬢さんはきみが守ってやるんだぞ」という言葉を伝えるため。
- この説を採用すると、必然的に「星河かぐやの人格が“星河かぐや”である状態(或いは神薙虚無が発現していない状態)において、神薙虚無は星河かぐやの行動を把握できない(つまりは“星河かぐやモード”のとき、神薙虚無は星河かぐやと認識が共有されず記憶に“欠陥”が生じる)。そのため星河かぐやから神薙虚無にチェンジする直前に、それまでの状況を星河かぐやに説明してもらう必要がある」ということになる。きっとトランスフォームするときに星河かぐやは心の中で神薙虚無に状況説明をしているのだろう。そうじゃなかったら神薙虚無は星河かぐやの犯行を黙認していたということになってしまう。
- 午前零時以降に星河かぐやがどうやって沖影定理の部屋に侵入したのかという問題があるのだが、隠し通路や鍵を奪ったなどの可能性を排除すると沖影定理が部屋に招いたと考えるしかない。
「あのお嬢さんはきみが守ってやるんだぞ」
この言葉は旧・久遠寺写楽である沖影定理が、御剣大ではなく神薙虚無に宛てた言葉であり、事件の真相にたどり着くための最後の手がかりとして遺していたものである。
おそらく沖影定理は「神薙虚無ならすぐにエーデルワイスや密室の謎をクリアする仮説にたどり着くだろう。しかし犯人の正体や動機まではわからないはず」と考え、最後の手がかりとして「あのお嬢さんはきみが守ってやるんだぞ」という言葉を御剣大に託した。つまり、沖影定理は「神薙虚無は御剣大から“久遠寺写楽は、あのお嬢さんはきみが守ってやるんだぞ、って言ってたよ”と言う言葉を聞いて真相に到達するだろう」と考えていた。そしてその通り神薙虚無はその言葉を最後の手がかりにして真相に到達した。
なぜ「あのお嬢さんは~」という言葉が最後の手がかりとなったかについて、「あのお嬢さん」「守ってやるんだぞ」という言い方からして「あのお嬢さん」は使徒の誰かではなく(使徒が対象なら「あの娘を守ってやってくれ」とかになるはず)、こちら側の身内である名探偵たちの中の誰かである可能性が高い。神薙虚無は「なぜ名探偵たちの中の誰かを守らないといけないのか? そもそも何から守るんだ? 誰かに狙われてるのか? それとも名探偵たちの誰かが世間から糾弾されるようなことをしでかしたのか?」と考えるはずで、そしてその瞬間に「まさか名探偵たちの中に犯人がいるのか? だとしたら誰だ?」ということについて思考を巡らすだろう。やがて「もし星河かぐやが久遠寺オルゴールの“言葉”を聞いたとしたら犯行を行うのではないか」という仮説に至る。最終的に「自分が久遠寺オルゴールを解放してしまったために、星河かぐやに“言葉”を知られて事件が起きた。そして久遠寺写楽はそれらの出来事が起きるのを見越していた。さらには御剣大を利用して、回りくどい方法で自分に向けて最後の手がかりを残していた」ということを理解し、全て沖影定理の描いたシナリオ通りで思わず笑い声をあげた――という感じだったんじゃないだろうか。
もし本当にこれが真相だとしても、そもそも証拠も残ってないうえ、例の久遠寺オルゴールの“言葉”が具体的にどういうものなのかも不明であり、いくつかの推測にも根拠が乏しいため常人が真相に到達するのは殆ど不可能と言っていい。仮に正解だったとしても超常的な名探偵・神薙虚無と当事者である星河かぐや以外に把握できるわけがない。
だから神薙虚無は真相を喋らずに黙っているだけで星河かぐやを守ることができる。事件後に神薙虚無が消えたのは、真実を封印して星河かぐやを守るためだったのである。
やがてこれらの事件は御剣大の手によって「神薙虚無最後の事件」として出版されるが、時間が経つにつれて星河かぐやは罪悪感に苛まれて仲間たちに真相を告白した。しかし、立件がほぼほぼ不可能になった事件で星河かぐやが自首したところでなんかアレだし、名探偵たちは「神薙虚無はでっち上げだった」ということにして星河かぐやを守り、事実を有耶無耶にすることにした。つまり捏造騒動は他ならぬ名探偵たちの意向だったため、彼らは捏造疑惑を否定しなかったのである。
あとがき
あーめちゃくちゃつかれた……とりあず結論を無理矢理捻りだしてなんとかこじつけられたから満足。たのしかった。
そもそもぼくみたいな教養のないカス虫オタクが天才の仕掛けた謎を完全解明大正解するのは正直無理だと思ってるから無謀な挑戦にしかならないんだけど、この妄想のどこか一部でも真相に掠ってたら嬉しいな~。
でも「神薙虚無の正体」の推理は結構自信があって、これに気づいてから出題編をもう一度読み直したときは「ま、まじかよ……!!!!まじかよ!!!!!」って叫びましたね。もしもこれでただの深読みで大外れだったら恥ずかしい。
なにはともあれ解決編がたのしみです!!!!!!